大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(ネ)335号 判決

記録によると、控訴人等訴訟代理人が「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする。」との判決を求める旨記載した控訴状を当裁判所に提出したのは、昭和二十八年三月二日である。

第一審の控訴人等訴訟代理人石川金次郎が原判決の送達を受けたのは、同年二月十四日である。してみると、控訴人等の原判決に対する控訴期間は、昭和二十八年二月二十八日をもつて満了すべく従つて本件控訴は不適法なものといわざるを得ない。控訴人等訴訟代理人は、弁護士石川金次郎からは、本件訴訟の進行について、何の報告もないし、殊に原判決書が盛岡市の同弁護士宅に送達された当時は、同弁護士はカリエス症のため、東京の慈恵医科大学附属病院に入院重態中であつたので、控訴人等に通知するに由なく、従つて本件控訴期間の経過は、控訴人等及び控訴代理人の全く予知し得なかつたところであると主張し、控訴人等訴訟代理人提出の昭和二十八年三月二十五日附朝日新聞掲載の記事によると、石川弁護士が、昭和二十八年二月五日以来、カリエス症のため、東京の慈惠医科大学附属病院に入院し、同年三月二十四日同病院で死去したことは窺い得るが、同代理人提出の同年二月二日附久保田喜孝から同代理人宛の書留郵便物、同月十三日附同代理人から久保田喜孝宛の手紙、同月二十日附久保田喜孝から同代理人宛の書留郵便物を査閲し、更に控訴組合代表者兼控訴本人岩田徳次郎の審尋の結果を参酌して考えると、控訴人等は久保田喜孝を介して、昭和二十八年二月二日附書面で、控訴代理人たる弁護士石田寅雄に本件訴訟の処理を依頼していること、同弁護士は、右委任に基き第一審裁判所に出頭して調査した結果、既に本件訴訟が同年一月二十一日結審となり、同年二月四日控訴人等敗訴の判決(無担保仮執行宣言附)言渡があり、右判決書正本も既に発送済であることが判明したので、同月十三日附書面をもつて、その旨久保田喜孝に通知し、且つ控訴並びに仮執行停止申請を希望するかどうかを問合せ、希望すれば直ちに手続をする旨知らしていること、前示岩田徳次郎は、同月二十日頃石川弁護士の事務員から敗訴の判決を受けたことを知らされると、同日久保田喜孝を訪問して事件の処理方を相談し、同人を介して、同日附書面をもつて、石田弁護士に控訴人等のための控訴提起方を委任し、該書面は、同月二十一日東京都内小石川郵便局に到達していることが窺えるので、特別の事情のない限り、石川弁護士の委任事務処理上の懈怠を採つてもつて、本件控訴の提起が、已むを得ない事由によつて遅延したものとなすことはできない。控訴人等訴訟代理人は右控訴委任の郵便物は、同月二十五日に同代理人に送達されたが、当時旅行中であつたのと、仮りに右郵便物発信当日原判決書の送達ありたりとしても、昭和二十八年三月六日までは控訴期間があると確信したと主張するけれども、同代理人は前記認定のように、既に久保田喜孝に対し、同年二月十三日附書面をもつて、控訴提起の希望があれば、直ちに手続をすると表明しているのであるから、本件控訴の提起については、周到の注意を払い、万違算なきを期すべきものというべく、これを左右するに足る資料がないから、右旅行中であつたとの事由並びに控訴期間を同年三月六日までと信じたことは、いずれも民事訴訟法第百五十九条所定の事由に該らない。控訴人等訴訟代理人は、原判決に上訴附加期間の指定のなかつたことも、同法条の適用上酌量さるべきものであると主張するけれども、上来認定したように、久保田喜孝を介して控訴人等と石田弁護士間に書面のやりとりがあつた事情にかんがみると、右上訴附加期間の指定のなかつた事由は、同法条の適用上酌量さるべきものとなし得ない。

以上の次第であつて、本件控訴の不適法は、補正することができないものであるから、民事訴訟法第三百八十三条に則り、本件控訴を却下すべきものとし、控訴費用の負担につき、同法第九十五条、第八十九条、第九十三条を適用して、主文のとおり判決する。

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